部署紹介

(臨床検査医学講座)

はじめに

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当講座は1991年4月に久米章司初代教授(1991年4月〜1997年3月在任)により山梨医科大学医学部臨床検査医学講座として開講されました。臨床検査医学を専門とする臨床系講座ではありますが、当初より血栓止血分野、特に血小板血生物学の基礎研究を精力的に行ってまいりました。2代目である前・尾崎由基男教授の下でも基礎研究を積極的に推進し、2016年1月1日より、井上克枝教授による新体制に移行しました。基礎研究に対するスタンスは変わることなくこの伝統の維持発展のため今日もスタッフの奮闘は続きます。

研究概要

私達は、血小板活性化蛇毒ロドサイチンの受容体として、これまで知られていなかった新たな血小板活性化受容体 C-type lectin-like receptor 2(CLEC-2 クレックツー)を同定しました。これは、バーミンガム大学のSteve P. Watson 博士と、血小板を使用したMS/MS解析の第一人者である、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学のAngel Garcia博士らとの共同研究です。
CLEC-2は細胞内に、一つのYITLというチロシンを含むシグナル配列を持ち、CLEC-2とロドサイチンとの結合で活性化されたSrc family キナーゼにより、そのチロシン残基がリン酸化されます。リン酸化YITLモチーフにはチロシンキナーゼSykが、そのSH2ドメインにより結合して活性化されます。SykはLAT, SLP-76といったアダプター蛋白をリン酸化し、チロシンキナーゼBtkの活性化やPLCγ2の活性化を通じて血小板凝集が生じます。
CLEC-2は、ヒトでは血小板・巨核球にほぼ特異的に発現しますが、Kupper 細胞と肝類洞内皮細胞に発現するという報告があります。マウスでも血小板巨核球に最も多く発現しますが、好中球、単球や樹状細胞にも発現すると報告されています。
この受容体は生体内ではポドプラニン podoplanin(PDPN)と呼ばれる膜蛋白と結合して血小板を活性化します。ポドプラニンはある種の癌細胞やリンパ管内皮細胞、I型肺胞上皮細胞、腎足細胞などに発現しますが、血管内皮には発現しません。PDPNは、通常血小板と結合しない部位にばかり発現していますが、胎生期や病的状態では血小板CLEC-2と結合し、様々な病態生理学的役割を果たします。以下のような機能がありますが、血栓止血以外の役割が多く、血小板が臓器発生に必須の役割を果たすという思い寄らない役割があることがわかりました。私は、CLEC-2を中心として、血小板の血栓止血以外の役割に興味を持ち、研究を続けています。

血小板CLEC-2とPDPN結合がもたらす機能の例

  1. ポドプラニン発現腫瘍細胞の血行性転移を促進する
  2. 胎生期に血管とリンパ管の分離を促進する
    → CLEC-2 KOマウスは血液の流入したリンパ管が認められる
  3. 成体では炎症時の血管やリンパ節内高内皮細静脈の integrity を保つ
  4. 正常な肺発生を促進する
    → CLEC-2 KOマウスは出生直後に呼吸不全で死亡する
  5. 樹状細胞の CLEC-2 は抗原提示の際に、リンパ管内皮やリンパ節内のポドプラニンと結合することでリンパ管やリンパ節内を移動する
  6. 流血中で血栓を安定化する(この作用をもたらすCLEC-2リガンドは不明)

止血凝固異常症患者さんの診療

血液内科外来の一部で止血凝固外来を行っています。
血小板機能異常、原因不明の出血、血栓傾向の精査依頼、術前検査でPT、APTT、血小板に異常を認めた患者さんのコンサルテーションなどをお受けしています。

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